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UNEP排出ギャップ報告書2026:1.5℃が「オーバーシュート」前提となった理由を解説

UNEPは、オーバーシュートなしで温暖化を1.5℃に抑える可能性は失われたとしています。オーバーシュートの意味、2026年の数値と昨年の比較、そして2100年までに気温を再び下げるために何が必要かを解説します。

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Walkway of the United Nations headquarters complex in Nairobi, Kenya, home of the UN Environment Programme (UNEP)
Danish Dhamani / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 · Source

要点

  • 国連環境計画(UNEP)は2026年10月21日、『排出ギャップ報告書2026:The Point of Return』を公表しました。報告書は、オーバーシュートを「ゼロまたは限定的」に抑えたうえで温暖化を1.5℃にとどめる可能性は失われたとしています。
  • UNEPの「可能な限り低い」オーバーシュート経路では、温暖化は今世紀半ばごろに約1.7〜1.8℃でピークに達し、その後2100年までに1.5℃以下に戻る確率は50%です。
  • この経路では、世界の温室効果ガス排出量を2025年比で2030年までに18%、2035年までに45%、2040年までに69%削減する必要があります。各国の誓約を完全に実施しても、削減は2030年までに5〜8%、2035年までに11〜15%にとどまります。
  • 予測される温暖化は昨年の報告書より大きくなっています。現行政策では2.8℃、すべての国別気候計画が実施された場合でも2.6℃です。2025年の報告書では、誓約を完全に実施した場合の数値は2.3〜2.5℃でした。
  • 気温を再び下げるには、今世紀中に約3,200億トン(320ギガトン)のCO2を除去し、恒久的に貯留する必要もあります。これは2024年水準の世界のCO2排出量のおよそ8年分に相当します。

UNEPは実際に何を述べたのか

UNEPが毎年公表する排出ギャップ報告書は、各国の気候政策と誓約によって世界の排出量がどこへ向かっているかを、パリ協定の気温目標を達成するために必要な排出水準と比較するものです。2026年版のタイトルは『The Point of Return』です。その主な結論は、例年よりも率直なものとなっています。国連地域広報センター(UNRIC)によると、報告書は「オーバーシュートを『ゼロまたは限定的』に抑えて1.5℃の排出ギャップを埋める機会は失われた」と述べています。

これは、UNEPが1.5℃という目標を放棄したことを意味するものではありません。報告書は問いの立て方を変えています。1.5℃を一度も超えないことはもはや不可能であるため、目標はピークをできるだけ低く短く抑え、そのうえで今世紀末までに気温を1.5℃に戻すことへと変わります。国連ニュースによると、アントニオ・グテーレス国連事務総長は「オーバーシュートは降伏ではない」と述べました。オランダ環境評価庁(PBL)によると、報告書の主執筆者であるミシェル・デン・エルゼン氏は、限定的なオーバーシュートでの1.5℃は「もはや不可能」だと述べています。

国連ニュースは、この報告書がトルコ・アンタルヤで開かれるCOP31の1か月前に公表されたと伝えています。COP31では、パリ協定に基づく進捗を評価する2回目のグローバル・ストックテイクが始まります。

科学的に見た「オーバーシュート」の意味

気候科学におけるオーバーシュートとは、世界の平均気温が特定のしきい値(ここでは産業革命前比1.5℃)を一定期間上回り、その後再びその値を下回ることを指します。パリ協定の目標は、単年の暑い年ではなく、長期間にわたって平均した長期的な温暖化を対象としています。UNEPの2025年の報告書も、数十年平均の気温が1.5℃を超えるのは「今後10年以内である可能性が非常に高い」と述べ、同じ点を指摘していました。

オーバーシュートが現在UNEPの中心的なシナリオとなっている理由は、次の三つの考え方で説明できます。

1. 温暖化はCO2の累積排出量で決まる

二酸化炭素は大気中に非常に長くとどまるため、CO2による温暖化は特定の年の排出量ではなく、人類がこれまでに排出した総量に主に左右されます。排出量の多い年が続くたびに、その総量は増えていきます。2026年の報告書に関するPBLの要約は、現在の水準でCO2を5年間排出するごとに、ピーク時の温暖化が約0.1℃上乗せされるという目安を示しています。対策の遅れは、元に戻しにくい温暖化という代償を伴います。

2. ネットゼロは上昇を止めるが、逆転はさせない

CO2排出量が正味ゼロ(ネットゼロ)に達すると、CO2による温暖化はおおむねその時点の水準で横ばいになると予想されています。ネットゼロだけでは気温は下がりません。気温を下げるには、毎年排出する量よりも多くのCO2を大気から除去するネットマイナス排出が必要です。UNEPのUNifeedの発表によると、UNEPが2026年9月に公表した報告書『Limiting Overshoot』は、長期的なネットマイナス排出を求め、植林など慎重に管理された二酸化炭素除去(CDR)をその不可欠な要素と位置づけています。

3. 気温が下がっても戻らない被害がある

気温の曲線は再び下がることがあっても、一部の影響は元に戻らない可能性があります。UNRICは、わずかな気温上昇の積み重ねや1.5℃を超える期間が1年延びるごとに、氷床、永久凍土、海洋循環、サンゴ礁生態系に不可逆的な変化が生じるリスクが高まるという2026年報告書の警告を伝えています。そのためUNEPは、2100年時点の気温だけでなく、ピークの高さとその持続期間を重視しています。

2026年と2025年の報告書の数値比較

次の表は、国連および協力機関のページで報じられた、UNEPの直近2回の排出ギャップ報告書の主な数値をまとめたものです。必要な削減量の基準年は、2025年版では2019年、2026年版では2025年と異なります。これらの行は直接比較できません。

指標EGR 2025「Off Target」(2025年11月4日)EGR 2026「The Point of Return」(2026年10月21日)
今世紀の温暖化(現行政策)最大2.8℃(2024年報告書では3.1℃)最大2.8℃、2100年以降も上昇
温暖化(国別目標〔NDC〕を完全実施)2.3〜2.5℃2.6℃
温暖化(NDCとネットゼロ目標)使用した出典では言及なし2.1℃
1.5℃型経路に必要な削減2035年までに2019年比55%(2℃では35%)2025年比で2030年までに18%、2035年までに45%、2040年までに69%(最小オーバーシュート経路)
NDCの完全実施による削減2035年までに2019年比約15%2025年比で2030年までに5〜8%、2035年までに11〜15%
オーバーシュートの見通し2025年から迅速に行動すればオーバーシュートを約0.3℃に抑えられ(確率66%)、2100年までに1.5℃に戻る今世紀半ばごろに1.7〜1.8℃でピーク。2100年までに1.5℃以下となる確率は50%
気温を下げるために必要な炭素除去オーバーシュート0.1℃分を戻すには、現在の世界のCO2排出量の約5年分の除去が必要今世紀中に約320ギガトンCO2を除去・貯留(2024年のCO2排出量の約8年分)

出典:UNEP排出ギャップ報告書2025および2026に関するPBLの要約、国連ニュース(2026年10月21日)、UNRIC(2026年10月21日)。

目立つ変化は二つあります。第一に、誓約を完全に実施した場合の見通しが2.3〜2.5℃から2.6℃へと悪化しました。国連ニュースは、その理由として米国のパリ協定離脱と過去の排出量推計の見直しを挙げ、前回の報告書以降に提出された国別計画は「ほとんど違いを生まなかった」と伝えています。第二に、論点が「起こりうるオーバーシュートをいかに抑えるか」から「確実に起こるオーバーシュートをいかに管理するか」へと移りました。2025年の報告書はすでに、2024年の世界の排出量が前年比2.3%増の57.7ギガトンCO2換算と過去最高に達したと指摘していました。

9月の報告書『Limiting Overshoot』

排出ギャップ報告書は、2026年9月2日にナイロビで公表されたUNEPの別の評価報告書『Limiting Overshoot』を土台としています。UNEPのUNifeedの資料によると、同報告書は温暖化が1.5℃を超えるのは避けられず、おそらく今後数年以内になるとしています。そのうえで、オーバーシュートの規模と期間をできるだけ小さくし、できるだけ早く1.5℃未満に戻すための残された最善の選択肢として、「オーバーシュート、ピーク、低下」という経路を示しています。

9月の報告書はまた、適応は必要になるものの、とくにピークを低く抑えられなければ限界に直面し、不可逆的な影響が生じる可能性が高いとしています。ピークを低く抑えることでリスクが減り、適応がより安価かつ容易になり、気温を再び下げられる可能性も高まると論じています。発表の場で、UNEPのインガー・アンデルセン事務局長は「1.5℃を上回ったままでは、良い結果はない」と述べ、「1.5は間違いなく目標であり続ける」と付け加えました。グテーレス事務総長は、オーバーシュートを「できるだけ小さく短く」すべきだと述べました。

気温を再び下げるために必要なこと

2026年の報告書は、最小オーバーシュート経路に必要な条件を示しています。これらを合わせて見ると、課題の大きさがわかります。

早期かつ大幅な排出削減

排出量は2025年比で、2030年までに18%、2035年までに45%、2040年までに69%減らす必要があります。UNRICによると、グテーレス事務総長は必要なペースを「2035年まで毎年6%近く」と表現しました。既存の誓約を完全に実施しても、2035年までの削減は11〜15%にとどまります。この不足分こそが、報告書の名前にある「ギャップ」です。

化石燃料からの急速な脱却

国連ニュースとUNRICは、この経路における2025年比の削減幅を次のように伝えています。

燃料2035年までの削減2040年までの削減
石炭少なくとも55%75%
石油少なくとも15%30%
ガス少なくとも5%35%

出典:国連ニュースおよびUNRIC(2026年10月21日)。

UNRICはさらに、再生可能エネルギーの設備容量を2035年までに2025年比で3倍にする必要があると伝えています。報告書は、第1回グローバル・ストックテイクで掲げられた目標、すなわち2030年までに再生可能エネルギーを3倍、エネルギー効率の改善率を2倍にすること、メタンなどCO2以外のガスを削減すること、森林破壊を止めて回復させることにも言及しています。そして、その大半で進捗が不十分だと結論づけています。

大規模な炭素除去

大幅な削減を行ったとしても、1.5℃未満に戻るには大気からCO2を取り除く必要があります。PBLの要約は、その必要量を今世紀中に除去・恒久貯留する約320ギガトンのCO2としています。UNRICが挙げる手法には、再植林のほか、CO2を回収し、鉱物化し、地下に貯留する技術が含まれます。UNEPの9月の報告書は、除去は排出削減の代わりではなく、排出削減に上乗せして行うべきだとしています。

前進の兆し

報告書は悲観一色ではありません。UNRICによると、アンデルセン事務局長は、世界の再生可能エネルギー発電容量がパリ協定署名時の予想より3倍速く伸び、太陽光発電の導入は7倍速く伸びたと述べました。UNRICはまた、石炭と石油の供給の伸びが予測より緩やかであり、G20の複数の国が排出削減を継続していると伝えています。PBLは、こうした傾向が続き、追加の政策が講じられれば、再生可能エネルギーの容量は2030年までに3倍になりうるとしています。

影響と意味

気候政策を追う読者にとって、最大の変化はUNEPが用いる言葉にあります。最近まで、国連の報告書は1.5℃を「狭まりつつある窓」と表現していました。2026年の報告書は、オーバーシュートなしという意味での窓はすでに閉じたとしています。現在の実務上の目標は、約1.7〜1.8℃の一時的なピークとその後の低下であり、それさえも、どの政府が誓約した水準よりもはるかに大幅な削減と、まだ存在しない規模の炭素除去にかかっています。

ここから三つの実際的な帰結が生じます。COP31や2回目のグローバル・ストックテイクでの交渉は、オーバーシュートが起こるかどうかではなく、それがどれほど高く、どれほど長く続くかに焦点を当てることになりそうです。炭素除去は脇役から中心的な要件へと移り、恒久性、ガバナンス、費用負担をめぐる問題が浮上します。そして、UNEP自身が1.5℃を超えると一部の影響は適応の限界を超えると見込んでいることから、適応の緊急性が高まります。

不確かな点も多く残っています。UNEPの最善のシナリオでも、2100年までに1.5℃に戻る確率は50%にすぎず、しかも削減が直ちに始まり数十年にわたって続くことが前提です。本記事で確認した出典は、ピーク後に気温が実際にどれほどの速さで下がるのか、また必要な炭素除去のうちどれだけを現実的に構築できるのかについては述べていません。こうした点は、COP31に向けて各国政府が対応を示すなかで議論される見通しです。

よくある質問

気候科学でいう「オーバーシュート」とは何ですか?

オーバーシュートとは、長期的な世界平均の温暖化が、産業革命前比1.5℃などのしきい値を一定期間上回り、その後再び下回ることです。気温を再び下げるには、ネットゼロだけでなく、CO2のネットマイナス排出が必要です。

UNEP排出ギャップ報告書2026は1.5℃について何と述べていますか?

2026年10月21日に公表された報告書は、オーバーシュートを「ゼロまたは限定的」に抑えて1.5℃を達成する可能性は失われたとしています。最小オーバーシュート経路では、今世紀半ばごろに約1.7〜1.8℃でピークに達し、2100年までに1.5℃以下に戻る確率は50%です。

現行政策ではどの程度の温暖化が見込まれますか?

国連ニュースによると、UNEPは現行政策で今世紀中に最大2.8℃、すべての国別気候計画が実施された場合で2.6℃の温暖化を予測しています。いずれも2025年の報告書より悪化しています。

1.5℃に戻るには何が必要ですか?

UNEPの経路では、排出量を2025年比で2030年までに18%、2035年までに45%、2040年までに69%削減すること、石炭・石油・ガスからの急速な脱却、そして今世紀中に約320ギガトンのCO2を除去し恒久的に貯留することが必要です。

2026年の報告書とUNEPの『Limiting Overshoot』報告書はどう関係していますか?

2026年9月の『Limiting Overshoot』報告書は、温暖化が今後数年以内に1.5℃を超える可能性が高いとし、「オーバーシュート、ピーク、低下」という経路を推奨しました。排出ギャップ報告書2026は、その経路に必要な排出削減と炭素除去の量を示しています。

出典

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