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トークン化株式と24時間取引:仕組みとリスクを解説
Ripple Primeが株式やETFを対象とする24時間取引のスワップを開始する一方、ナスダックとDTCCは規制された仕組みの中でトークン化を進めています。トークン化株式が何を表すのか、24時間取引の仕組み、そしてHSBCが流動性はまだ薄いと指摘する理由を解説します。
要点
- 「トークン化株式」は一つの商品ではありません。米国の規制当局は、企業自身が発行または承認したトークン、カストディアンが保管する株式に裏付けられたトークン、株価に連動するだけの合成トークンを区別しています。それぞれ保有者に与えられる権利が異なります。
- 2026年10月15日、Ripple Primeは株式やETFを含む100以上の参照市場を対象とする24時間365日取引のスワップを開始しました。マーケットメーカーのVirtuがすでに取引しています。これはHyperliquid上の無期限先物を参照するスワップであり、トークン化株式ではありません。
- HSBCのデジタル資産リサーチ責任者は、今回の開始を「革命的ではなく、進化的」と評しました。市場は急成長しているものの、連動する伝統的市場と比べるとまだ小さく、流動性の不足が大口取引の制約になり得ると警告しています。
- RWA.xyzによると、2026年10月21日時点のトークン化株式の流通価値は約34.2億ドルでした。参照先である上場株式市場と比べると、ごくわずかな規模です。
- 主な未解決のリスクは、流動性の薄さ、原資産の取引所が閉まっている間の価格の乖離、トークン発行体に対するカウンターパーティー・リスク、そして法域ごとに異なる規制です。
トークン化株式が再び注目される理由
トークン化株式は、もはや暗号資産取引所だけの商品ではありません。既存の大手市場参加者も構築に乗り出しています。最新の動きはRippleによるものです。2026年10月15日、同社のプライムブローカレッジ部門であるRipple Prime(旧Hidden Road)は、機関投資家の顧客が株式、株価指数、ETF、金属、エネルギー、外国為替にわたる100以上の市場を参照するスワップを、取引と決済を24時間体制で行えるようになったと発表しました。Rippleは、すでにこの商品を利用している顧客として取引会社のVirtuを挙げています。
この開始には、大手銀行からの警告も伴いました。CoinDeskが10月21日に報じた顧客向けノートで、HSBCのデジタル資産リサーチ責任者であるダラ・マー(Daragh Maher)氏は、この市場を「急成長している」ものの、連動する伝統的市場と比べると「それほど大きくない」と評しました。また、流動性の不足が大口取引の制約になり得ると述べています。本稿では、これらの商品が何であるか、24時間取引が通常の取引所取引とどう違うのか、規制当局が何を示しているのか、そしてなぜ流動性が最大の未解決の課題なのかを解説します。
トークン化株式は実際に何を表しているのか
日常的な用法では、「トークン化株式」は複数の異なる金融商品を指します。2026年1月28日、米証券取引委員会(SEC)の3つの部局(企業財務局、投資管理局、取引市場局)のスタッフが、分類体系を示した共同声明を公表しました。この声明はスタッフによるガイダンスであり、委員会の規則ではありません。その出発点は、トークン化された証券も依然として証券であるという考え方です。所有記録をブロックチェーン上に移しても、証券法の適用のされ方は変わりません。
スタッフは市場を大きく2つの系統に分けています。
| モデル | トークンを作成する者 | 保有者が通常持つもの | 主な追加リスク |
|---|---|---|---|
| 発行体主導型 | 株式を発行した企業、またはその名義書換代理人 | 株式そのもの。オフチェーンの記録と併用、またはその代わりにブロックチェーン上に記録される | おおむね従来の株式と同じ。異なる権利を持つトークンは別の種類の株式とみなされる可能性がある |
| 第三者カストディ型 | 実際の株式を保管する、発行体と無関係の企業 | 原株式に対する直接または間接の権利。多くの場合、証券に対する権利(セキュリティ・エンタイトルメント) | カストディアンへのエクスポージャー(その破綻の可能性を含む) |
| 第三者合成型(連動証券) | 独自の債券や株式を発行する、発行体と無関係の企業 | 株価への経済的なエクスポージャー。ただし発行体の権利は一切ない | 第三者発行体の信用リスク |
| 第三者合成型(証券ベースのスワップ) | 発行体と無関係のカウンターパーティー | 価格に連動する契約。スタッフによれば「通常、保有者に株主としての権利、議決権、情報請求権その他の権利を一切付与しない」 | カウンターパーティー・リスク。個人顧客への販売には取引所取引と登録の要件が課される |
出典:SEC企業財務局・投資管理局・取引市場局「Statement on Tokenized Securities」(2026年1月28日)
実務上の教訓は、同じ企業の「トークン化」版と称される2つの商品が、まったく異なる性質を持ち得るということです。一方は議決権や配当を伴うかもしれません。もう一方は価格に連動するだけで、発行した企業の支払能力に依存しているかもしれません。SECのスタッフは、第三者のトークンでは、原株式の保有者なら直面しないリスク、たとえば第三者の破綻といったリスクに保有者がさらされる可能性があると指摘しています。
24時間取引は取引所の取引時間とどう違うのか
米国の上場株式は主に平日の取引所の通常取引時間に売買され、その前後に時間外取引の時間帯があります。取引はその後、中央の清算・決済システムを通じて決済されます。ブロックチェーン上の取引の場は休みなく稼働しているため、これらの株式を参照するトークンやデリバティブは、主要市場が閉まっている週末や夜間にも売買できます。
ここに構造的な隙間が生まれます。原資産の取引所が閉まっている間、その株式には公式の価格が存在しません。24時間取引の場での価格は、そこで取引している参加者、多くの場合は少数のマーケットメーカーやレバレッジをかけたトレーダーによって決まります。主要市場が再開すると、トークンや契約は実際の価格に追いつく必要があり、その際に価格が大きく動くことがあります。
CoinDeskは最近の例を挙げています。ある土曜日、半導体株に対する約5200万ドルのレバレッジ・ポジションが10分以内に強制決済されました。原株式がまったく取引されていない間に、売りはBinanceからHyperliquidへと広がりました。こうした事例は、24時間アクセスできることが、24時間市場の厚みがあることを自動的に意味するわけではないことを示しています。
Rippleが実際に開始したもの
Rippleの商品はトークン化株式ではありません。Rippleの10月15日の発表によると、Ripple Primeは各取引で当事者(プリンシパル)として行動します。各スワップの価値は、ブロックチェーン基盤のデリバティブ取引の場であるHyperliquid上でTrade.xyzが上場する無期限先物に連動しています。無期限先物には満期がありません。定期的な資金調達料(ファンディング)の支払いによって、参照価格の近くにとどまる仕組みです。
Rippleによると、顧客はこれらのポジションをRipple Primeで保有する他の資産クラスとクロスマージンでき、認められている場合には同社のステーブルコインRLUSDを担保として差し入れることができます。このサービスは現在、Ripple Primeの英領バージン諸島のライセンスの下で提供されており、Rippleは他の地域にも拡大する意向を示しています。Rippleは取引量を開示していません。Ripple Primeの国際部門CEOであるマイケル・ヒギンズ(Michael Higgins)氏は、発表の中で「RWAスワップは、伝統的市場とデジタル市場が出会う場所です」と述べました。
今回の開始は、これまでの取り組みの延長線上にあります。CoinDeskによると、Rippleは2026年2月に自社のブローカレッジをHyperliquidに接続しました。CoinDeskはまた、10月8日に、Rippleがレバレッジをかけた株式取引への資金提供から手数料を得ていると報じています。
HSBCが流動性はまだ薄いとする理由
CoinDeskの報道によると、マー氏のノートには3つの主な論点がありました。第一に、市場は小さな基盤から急速に成長しています。第二に、初期の利用者は長期的なヘッジを求める機関投資家よりも、マーケットメーカー、自己勘定取引会社、ベーシス取引を行うヘッジファンドである可能性が高いとしています。第三に、Rippleの成否は、そのサービスが既存のブローカーや取引の場よりも安く簡単であるか、また顧客の担保をより効率的に活用できるかにかかっているとしています。
以下の数値は、その規模を示しています。RWA.xyzが集計するトークン化株式は数十億ドル規模です。これは連動する上場株式市場と比べると小さく、HSBCのノートが指摘しているのもまさにこの点です。
| 指標(トークン化株式) | 値 | 30日前との比較 |
|---|---|---|
| 流通価値 | 34.2億ドル | +8.04% |
| 保有者数 | 438万 | +14.95% |
| 月間移転額 | 102.8億ドル | -73.75% |
| 価値ベースの上位プラットフォーム | bStocks(12億ドル)、Ondo(8億8450万ドル)、xStocks(5億9600万ドル)、Securitize(3億850万ドル)、Robinhood(1億4500万ドル) | |
出典:RWA.xyzトークン化株式ダッシュボード。2026年10月21日(UTC)時点で同ページに表示されていたデータ。数値は第三者のデータ提供者が集計したもので、算出方法は集計サービスによって異なります。
流動性の薄さが重要である理由は単純です。活発な買い手と売り手が少ないと、大口の注文は厚みのある取引所の場合よりもはるかに大きく価格を動かす可能性があります。週末の24時間取引の場では、その値動きの基準となる主要市場の価格が存在しません。
規制当局と市場インフラの取り組み
暗号資産ネイティブの取引の場と並行して、米国の伝統的な市場インフラも独自にトークン化への道筋を築いています。これまでの主な動きは次のとおりです。
| 日付 | 動き | 出典 |
|---|---|---|
| 2025年12月11日 | SECスタッフが、デポジトリー・トラスト・カンパニー(DTC)に対し、承認されたブロックチェーン上で3年間トークン化サービスを運営することを認めるノーアクションレターを発出。対象はラッセル1000構成銘柄の株式、主要指数ETF、米国債などの資産 | SEC / DTCC |
| 2026年1月28日 | SECスタッフが分類体系「Statement on Tokenized Securities」を公表 | SEC |
| 2026年3月18日 | SECが、代替可能であること、同一のCUSIPとティッカーシンボルを共有すること、同一の権利を伴うことを条件に、証券のトークン化版を従来の株式と同じ注文板で取引できるようにするナスダックの規則を承認 | SEC Release No. 34-105047 |
| 2026年7月15日 | DTCCが、DTCで保管されている資産をトークンに転換した本番環境での取引を報告 | DTCC |
| 2026年10月 | DTCCのトークン化サービスの開始予定時期。執筆時点では本格開始は独自に確認されていない | DTCC |
| 2026年10月15日 | Ripple Primeが、100以上の市場でHyperliquidの無期限先物を参照する24時間365日取引のスワップを開始 | Ripple |
2つのアプローチには重要な違いがあります。ナスダックとDTCのモデルは、トークン化株式を既存の規制された仕組みの中にとどめます。トークンは同じ権利を持つ同じ証券であり、取引所の取引時間中に同じ注文板で取引されます。オフショアのスワップや合成トークンのモデルは継続的な取引を提供しますが、デリバティブや第三者に対する請求権に依存しています。また、米国の主要な市場構造の外で運営されています。
未解決のリスク
- 流動性とスリッページ:トークン化や合成型の取引の場の注文板は、主要取引所よりもはるかに薄くなっています。大口注文は価格を大きく動かす可能性があり、HSBCはこれを制約要因として指摘しています。
- 週末・夜間の価格の乖離:原資産の市場が閉まっている間、24時間取引の場の価格は徐々にずれたり急変したりする可能性があります。その後、取引所の再開時に価格が修正され、追加証拠金の請求や強制決済を引き起こすことがあります。
- カウンターパーティー・リスクとカストディ・リスク:カストディ型や合成型のトークンは、仲介する企業に依存しています。SECのスタッフは、株主なら直面しないリスク、たとえば第三者の破綻といったリスクに保有者が直面する可能性があると指摘しています。
- 権利の不一致:多くの商品は価格へのエクスポージャーを提供するものの、議決権、情報請求権、企業に対する直接の請求権を伴いません。
- 規制の分断:サービスは法域ごとに異なるライセンスの下で提供されています。そのため、利用できる範囲、投資家保護、法執行もそれぞれ異なります。
影響と意味
株式のトークン化は、2つの路線で同時に進んでいます。一方では、米国の取引所と中央証券保管機関が既存のルールを調整し、同じ株式を同じ権利と同じ注文板のままトークンとして存在させようとしています。もう一方では、暗号資産ネイティブのプラットフォームやRipple Primeのようなブローカーが、主にプロのトレーダー向けに、主にオフショアのライセンスを通じて、株価に対するデリバティブ・ベースの継続的なエクスポージャーを提供しています。
Rippleの取り組みは、大手取引会社が24時間アクセスやステーブルコインの担保利用に関心を持っていることを示しています。HSBCのノートは、関心があることと市場に厚みがあることは同じではないと改めて示しています。取引量が増え、取引所の取引時間外の価格形成がより信頼できるものになるまでは、市場はマーケットメーカーと短期戦略が中心であり続け、価格の乖離が最大の未解決リスクであり続ける可能性が高いでしょう。今後の注目点としては、DTCCのトークン化サービスが本格稼働するかどうか、どの取引の場がナスダックのトークン化取引規則を採用するかが挙げられます。Rippleもまだ取引量や追加予定の地域を開示していません。
よくある質問
トークン化株式とは何ですか?
企業の株式に結び付けられたブロックチェーン上のトークンです。2026年1月のSECスタッフ声明によると、発行体がブロックチェーン上に記録した株式そのもの、カストディアンが保管する株式に裏付けられたトークン、または株価に連動するだけの合成商品のいずれかであり得ます。
トークン化株式を保有すると議決権や配当を得られますか?
モデルによって異なります。発行体主導型のトークンは株式と同じ権利を伴う場合があります。合成トークンや証券ベースのスワップは通常、議決権や情報請求権のない価格へのエクスポージャーのみを提供し、発行した第三者へのエクスポージャーも加わります。
Rippleは2026年10月に何を開始しましたか?
2026年10月15日、Ripple Primeは株式やETFを含む100以上の市場を参照する24時間365日取引のスワップを開始しました。このスワップはHyperliquid上でTrade.xyzが上場する無期限先物に連動し、認められている場合はRLUSDを担保として受け入れ、英領バージン諸島のライセンスの下で提供されています。
HSBCはなぜ市場の流動性がまだ薄いとしているのですか?
CoinDeskが2026年10月21日に報じたところによると、HSBCのデジタル資産リサーチ責任者は、市場は急成長しているものの連動する伝統的市場と比べると小さく、流動性の不足が大口取引の制約になり得ると述べました。
トークン化株式はナスダックで取引できますか?
SECは2026年3月、代替可能であること、同一のCUSIPとティッカーシンボルを共有すること、同一の権利を伴うことを条件に、証券のトークン化版を従来の株式と同じ注文板で取引できるようにするナスダックの規則を承認しました。
出典
- CoinDesk: Ripple brings Wall Street into 24/7 stock bets, but HSBC warns markets are still thin(2026年10月21日)
- Ripple: Ripple Prime launches 24/7 RWA perpetual swaps(2026年10月15日)
- SECスタッフ: Statement on Tokenized Securities(2026年1月28日)
- SEC Release No. 34-105047:トークン化証券に関するナスダック規則の承認(SR-NASDAQ-2025-072)
- SEC取引市場局:DTCへのノーアクションレター(2025年12月11日)
- DTCC: DTCC turns tokenization into reality(2026年7月15日)
- RWA.xyz:トークン化株式ダッシュボード(2026年10月21日時点のデータ)
この記事は情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。
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